01
2本の糸、1つの結び目
ここに見えているのは、家庭用ミシンです。このミシンが縫うのは本縫いで、2本の糸を使います。上糸は上にある糸こまから下りてきます。もう1本は布の下で、小さなボビンに巻かれて待っています。1針ごとに、ミシンはこの2本の糸を布の中で絡み合わせます。
すべての動きは1本の主軸から生まれます。この軸は、はずみ車を使って手で回すこともできます。はずみ車が1回転すると、1針縫えます。その1回転の間に、針棒が針を上下させ、天びんが上糸を引きます。下では回転釜が回り、送り歯が布を送ります。
家庭用ミシンは1分間に800〜1000針ほど、工業用ミシンは数千針も縫います。速すぎて目では追えないので、モデルはスローモーションで動いています。はずみ車の角度は、針がいちばん高い位置にあるときを0°として数えます。
モデルをドラッグすると視点を回せます。モデルの上でスクロールすると拡大・縮小できます。読み進めるにつれて、表示も本文に合わせて変わります。
02
針がループを作る
ミシン針は、針穴が先端の近くにあります。針の前側には長溝という長い溝があり、針が布を通るとき、糸はこの溝に収まっています。後ろ側にはえぐりと呼ばれる短い切り欠きがあります。釜が通るのはここです。
針は2枚の布を貫いて、180°でいちばん低い位置に達します。そこから上がり始めます。えぐりの側では、布が糸をつかんで引き止めます。そのため、針が約2mm上がると、糸は針の横にふくらんで小さなループになります。
約205°で、回転釜の剣先が針のすぐ後ろ、えぐりのところを通り過ぎます。剣先はループに入り込み、ループをすくい取ります。ここから先、上糸を運ぶのは針ではなく釜です。
この瞬間で表示が一時停止するので、剣先がループに入っている様子を確かめられます。再生ボタンを押すと続きが見られます。
03
ボビンの周りを回る
回転釜は、はずみ車1回転につき2回転します。釜の中にはボビンケースが収まり、その中に下糸を巻いたボビンが入っています。釜はケースの周りを回りますが、ケースそのものは止まったままです。
剣先がループをすくうと、釜はそのループをボビンケースの周りに運んでいきます。進むにつれて、ループはどんどん大きく広がります。ループはケースの周りをぐるりと一周し、それによってケースから出ている下糸の周りも一周します。
だから、ボビンケースは釜と一緒に回ってはいけないのです。もし一緒に回ったら、ループもケースと一緒に回ってしまい、いつまでも通り抜けられません。ケースが止まっているからこそ、ループはケースの周りをぐるりと回り、反対側から抜けられるのです。
これで上糸と下糸は、鎖の2つの輪のようにつながりました。このからみ合いこそが、本縫いの縫い目の正体です。あとは引き締めるだけです。
04
糸を引き締める
ループが釜から外れると、天びんが上がります。天びんはループを釜から引き上げ、布の中へ引き込みます。2本の糸は布の中ほどで絡み合い、1針の縫い目ができあがります。
どちらの糸も、途中でブレーキがかかっています。上糸は1組の糸調子皿の間を通り、はさまれて締め付けられます。下糸は、ボビンケースにある小さな糸調子ばねの下をすべって出てきます。結び目がどこに落ち着くかは、この2つの引く力の釣り合いで決まります。
The knot sits in the middle of the fabric.
2つの力が釣り合っていると、結び目は布の真ん中に隠れます。これが釣り合いの取れた縫い目です。上糸調子が強すぎると、結び目は布の表まで引き上げられます。すると上糸が表にまっすぐ横たわり、1針ごとに下糸が表に見えてしまいます。弱すぎると、結び目は布の裏側に残ります。上の3つの糸調子を試して、結び目が動く様子を見てください。
05
布を送る
布は針板の上をすべります。針板は、針の下にある平らな板です。押さえが上から布を押さえています。下では送り歯が、1針ごとに4つの動きをします。針板から上がり、後ろへ動き、下がり、また前へ戻ります。布を後ろへ運ぶのは、上がっている間だけです。
布送りが布を動かすのは、針が布から抜けている間だけです。送り歯は1回転の始めに、針がまだ高い位置にあるうちに上がって布を送ります。針が下りてくるころには、布は止まり、送り歯も下がっています。1回転ごとに布が動く距離が縫い目の長さです。ふつうは2.5mm、つまり1cmに4針です。
スライダーを動かして、縫い目の長さを変えてみてください。送り歯の歩幅が長くなったり短くなったりして、縫い目の間隔が広がったり詰まったりします。針と釜は、どの1回転でもまったく同じ仕事をしています。